「冷やしてゴクゴク」だけじゃない。“ゆっくり味わうビール”と、修道院が育てた一杯のはなし
キンキンに冷やして、仕事あがりにプシュッと一杯。もちろん、それがビールの醍醐味です。でも実は、ワインのように少し温度を上げて、時間をかけて味わうビールの世界もあるんです。今日は「トラピスト」と「アビイ」の違いから、度数の高いビールのおいしい飲み方まで、店頭でいただく質問をたどりながらお話しします。

この記事のポイント
- ビールには「冷やして一気に」と「少し温度を上げてゆっくり」の、二つの楽しみ方がある
- 「トラピスト」と「アビイ」は、修道院との関わり方で呼び名が変わる
- 度数の高いビールは、冷やしすぎず少し温度を上げると、香りがふわりと開く
先日、うちのスタッフが接客していたときのこと。オルヴァルの、あのボウリングのピンのような形のボトルを手に取ったお客さまが、「これ、本当にビールなん? なんだかワインみたいやね」とおっしゃったそうです。気持ち、とてもよくわかります。実際、ゆっくり味わうタイプのビールは、飲み方も楽しみ方も、どこかワインに近いところがあるんです。住田屋は広島で八つの店舗を構えていますが、こうした「ちょっと変わったビール、ないですか?」というご相談は、年々増えている気がします。
01「冷やしてゴクゴク」だけじゃない、ビールのもう一つの顔
ビールは大きく分けると、常温に近い温度で発酵させる「エール(上面発酵)」と、低い温度でじっくり発酵させる「ラガー(下面発酵)」の二つに分かれます。日本でおなじみの、よく冷やしてゴクゴク飲むタイプの多くはラガー。このあたりの違いは「エール」と「ラガー」、何が違う?でくわしくお話ししているので、気になる方はのぞいてみてください。
そして、エールの中には、度数が高く、香りや味わいがぐっと複雑なものがあります。こうしたビールは、冷蔵庫でキンキンに冷やしてしまうと、せっかくの香りが閉じてしまうんです。少し温度を上げて、大きめのグラスで、ゆっくり。そうすると、果実やスパイス、カラメルのような奥行きが、ふわりと立ちのぼってきます。急いで飲み干すのではなく、一杯と向き合う——そんな楽しみ方ができるのも、ビールのおもしろいところだなあと思います。
02「トラピスト」と「アビイ」、何が違うの?
ゆっくり味わうビールを語るうえで外せないのが、修道院にルーツを持つビールです。ラベルでよく見かける「トラピスト(Trappist)」と「アビイ(Abbey)」。似たような言葉ですが、実ははっきりとした違いがあります。
トラピストビールは、修道院の敷地の中で、修道士自身の手によって、あるいはその管理のもとで造られたビールのこと。しかも、売上は修道院の維持や慈善活動にあてられ、営利を第一の目的としない——そうした厳しい条件を満たしたものだけが名乗れます。一方のアビイビールは、修道院ゆかりの製法やレシピを受け継いだ“修道院スタイル”のビールで、一般の醸造所が手がけるものも含まれます。つまり、「どこで、誰が、どんな目的で造っているか」が、二つを分ける境い目なんですね。

03度数の高いビールを、おいしく飲むコツ
アルコール度数が高く、味わいの濃いビールは、ほんの少しの工夫で見違えるほどおいしくなります。むずかしいことは何もありません。まずは、冷やしすぎないこと。キンキンではなく、10〜14℃くらい——冷蔵庫から出して少し置くイメージです。次に、口がすぼまった、ふくらみのあるグラスを選ぶこと。香りがグラスの中にたまって、鼻に届きやすくなります。そして最後に、時間をかけて少しずつ。温度が上がっていくにつれて表情が変わっていくのを、のんびり追いかけてみてください。
おもしろいのは、こうしたビールの中には「熟成する」ものがあること。たとえばオルヴァルは、瓶の中に生きた酵母が入っていて、時間とともに少しずつ味わいが変わっていきます。度数の高いビールも、ワインのように寝かせて楽しむ方がいらっしゃるんですよ。買ってすぐの一本と、少し置いた一本。飲み比べてみるのも、通な楽しみ方だと思います。
04ゆっくり味わいたい、個性派の3本
※香り・味わい・余韻は住田屋スタッフの目安です。
オルヴァル 330ml
Orval — Trappist Ale
飲みごろ 12〜14℃世界に10ほどしかない、本物のトラピストビールの一つ。アルコール度数は6.9%。瓶詰めのときに加えられる野生酵母「ブレタノミセス」が、乾いた複雑さと、時とともに変わる奥行きを生み出します。はじめの一本に、私はよくこれをおすすめしています。
相性のよい一皿:熟成チーズ/ローストチキン/きのこのソテー
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セントセバスチャン グランクリュ 500ml 陶器ボトル
St. Sebastiaan Grand Cru
飲みごろ 10〜12℃持ち手付きの陶器ボトルが目を引く、ベルギーのアビイビール。スイングトップの栓を開ける瞬間から、特別感があります。にごりのある、まろやかで奥行きのある味わいで、贈りものにも喜ばれる一本です。飲み終えたボトルを一輪挿しに、という方もいらっしゃいます。
相性のよい一皿:ビーフシチュー/パテ・テリーヌ/白カビチーズ
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サミクラウス クラシック 330ml(14度)
Samichlaus Classic — Doppelbock
飲みごろ 12〜14℃「え、これ本当にビール?」と二度見してしまう、度数14%のモンスターラガー。名前は、スイスの言葉で「サンタクロース」を意味します。もともとは年に一度、12月6日の聖ニコラウスの日にだけ仕込まれる特別なビールで、長い熟成を経て世に出されます。食後に、デザート代わりにちびちびと。
相性のよい一皿:ブルーチーズ/ビターチョコレート/ドライフルーツ
商品ページを見る →※価格・在庫は各商品ページでご確認ください。
05よくある質問
- トラピストビールとアビイビールは、何が違うの?
- トラピストビールは、修道院の中で修道士の手や管理のもとで造られ、国際トラピスト協会の認定(Authentic Trappist Product)を受けたものを指します。世界でも10ほどしかありません。アビイビールは、修道院ゆかりの製法や名前を受け継いだ“修道院スタイル”のビールで、一般の醸造所が造るものも含まれます。
- 度数の高いビールは、どう飲むのがおすすめ?
- 冷やしすぎず(10〜14℃が目安)、口のすぼまった大きめのグラスで少しずつ楽しむのがおすすめです。温度が上がるにつれて香りが開き、甘みやコクがいっそう引き立ちます。
- ビールも熟成するの?
- 一部のビールは熟成します。オルヴァルは瓶の中の野生酵母によって時間とともに味わいが変化し、サミクラウスのような高アルコールのビールも熟成に向きます。いずれも冷暗所で、立てて保管してください。
いつものビールも大好きですが、たまには一本、ゆっくり向き合うビールを選んでみる。それだけで、いつもの夜が少し特別になります。「どれから試せばいい?」と迷ったら、どうぞお気軽に声をかけてくださいね。八つの店舗のスタッフが、あなたの一本を一緒に探します。(文・廣中ようこ)
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