木のトレーに並んだ、色とりどりのクラフトビールの飲み比べ

「エール」と「ラガー」、何が違う? ビールを二つに分ける、酵母と発酵のはなし

BEER|エールとラガーの違い

「エール」と「ラガー」、何が違う? ビールを二つに分ける、酵母と発酵のはなし

色でも、強さでもない。ビールを二つに分けているのは、酵母と、発酵させる温度です。

先日、後輩スタッフから「お客さまに『これってエール?ラガー?』と聞かれて、うまく説明できなくて……」と相談を受けました。手に取っていたのは、ラベルにスタイル名が英語で小さく書いてあるだけの一本。たしかに、これでは迷いますよね。

広島に8店舗ある住田屋では、ビールの棚の前でこうした質問をいただくことが本当に多いんです。ピルスナー、ペールエール、IPA、ヴァイツェン。横文字が並ぶほど、どれが自分の好みなのか見えにくくなる。でも、棚を一本の線でざっくり二つに分けてしまえば、選び方はぐっとシンプルになります。その線が「エール」と「ラガー」です。

木のテーブルに並んだ3杯のクラフトビール
同じ"ビール"でも、色も香りもさまざま(写真:Pexels/フリー素材)

01違いは「酵母」と「温度」

エールに使うのは、発酵中に液面のほうへ浮かんでくる上面発酵酵母。15〜24℃くらいの比較的あたたかい温度で、発酵が一気に進みます。このとき酵母がたくさんつくるのが、エステルと呼ばれる香りの成分。りんごやバナナ、洋梨を思わせる果実の香りは、ここから来ています。

ラガーは、発酵の終わりにタンクの底へ沈んでいく下面発酵酵母を使います。5〜12℃ほどの低い温度で時間をかけて発酵させ、さらに冷たいところでじっくり寝かせる。名前の由来はドイツ語の「lagern(貯蔵する)」です。寝かせているあいだに雑味が落ち着いて、あの澄んだキレが生まれます。

後輩には、こう伝えました。「あたたかく、勢いよく発酵させるのがエール。冷たく、ゆっくり寝かせるのがラガー。香りを楽しむならエール、キレを楽しむならラガー」。細かい例外はいくらでもあります。それでも店頭でご案内するなら、まずはこの一言で十分だと私は思っています。

フレッシュなホップを添えたグラスのビール
エールの華やかな香りは、酵母とホップの掛け合わせから(写真:Pexels/フリー素材)

02「エールは濃い、ラガーは軽い」は本当?

これもよく聞かれますが、答えは「半分だけ本当」です。日本の大手メーカーの生ビールはピルスナー系のラガーが中心なので、「ラガー=すっきり」という印象が強いのは自然なこと。

ただ、世の中にはアルコール14度もある濃厚なラガーがありますし、逆に軽やかなセッションIPAはエールの仲間です。真っ黒なビールだって、スタウトならエール、シュヴァルツならラガー。色や強さではなく、あくまで酵母と発酵で分かれている。ここがわかると、ラベルの読み方が少し変わってきます。

歴史をたどると、エールのほうがずっと古い造り方です。ラガーが世界に広まったのは、冷蔵の技術が発達した19世紀以降。私たちが「ビールらしい」と感じるあのキレは、じつは比較的新しい味なんですね。

飲む温度も、この性格に合わせてあげると素直においしくなります。ラガーは4〜8℃でキリッと。エールは冷やしすぎず、7〜13℃くらいで香りが開くのを待つ。冷蔵庫から出して5分ほど置いてから注ぐ——エールは、それだけで表情が変わりますよ。

03飲み比べにおすすめ、住田屋の3本

違いをいちばん早くつかむ方法は、やっぱり飲み比べです。地元・西条のエール、常識をくつがえすラガー、そしてエールの奥深さを教えてくれる修道院のビール。性格のまったく違う3本を選びました。

※香り・味わい・余韻は住田屋スタッフの目安です。

テシゴトブルワリー クラフトエール飲み比べセット
エール|広島・東広島西条

テシゴトブルワリー 西条檸檬エール・恋米エール・酒粕エール 飲み比べセット

Teshigoto Brewery

まずは地元から。酒都・西条のテシゴトブルワリーが手がける3種のエールです。レモン、ブランド米の恋米、酒蔵の酒粕と、西条らしい素材がそれぞれに香ります。エールの華やかさを、いちばん身近に感じてもらえるセットです。飲みごろは8〜12℃くらい。

香りレモンの皮、米のやさしい甘い香り
味わい種類ごとに個性がはっきり。苦みはおだやか
余韻すっきり軽やかで、食事に合わせやすい

相性のよい一皿:唐揚げ・天ぷら/レモンを使った料理

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サミクラウス クラシック 330ml
ラガー|オーストリア

サミクラウス クラシック 330ml(アルコール14度)

Samichlaus Classic

「ラガー=軽い」を気持ちよく裏切ってくれる一本。年に一度だけ仕込まれる、アルコール14度のラガーです。ドライフルーツやカラメルを思わせる甘く重厚な味わいで、グラスに少しずつ注いで、時間をかけて楽しみたいお酒。キンキンに冷やすより、10〜14℃くらいがおすすめです。

香りドライフルーツ、カラメル、熟した麦芽
味わいとろりと濃厚で、なめらか
余韻長く、甘みとほのかな苦みが続く

相性のよい一皿:ブルーチーズ/ビターチョコレート/ナッツ

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オルヴァル 330ml ベルギー・トラピストビール
エール(トラピスト)|ベルギー

オルヴァル 330ml

Orval

エールの奥深さを知るなら、この一本。ベルギーの修道院で今も造られているトラピストビールです。瓶の中でもう一度発酵させる「瓶内二次発酵」と独特の酵母が生む、少し野性的で複雑な香り。同じエールでも、西条のエールとはまるで違う景色が広がっています。10〜14℃くらいで、ゆっくりどうぞ。

香り華やかなホップに、干し草を思わせる複雑さ
味わいドライで奥行きがあり、泡がきめ細かい
余韻心地よい苦みと酸が、きれいに引いていく

相性のよい一皿:ハードチーズ/生ハム

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※価格・在庫は各商品ページでご確認ください。

木のトレーに並んだ5杯のビール
何杯か並べて、少しずつ飲み比べるのがいちばんの近道(写真:Pexels/フリー素材)

04よくある質問

エールとラガー、初心者はどちらから飲むのがおすすめ?
まずは飲みやすいラガー(ピルスナーなど)から入り、少し慣れたらエールの香りの個性を試してみるのがおすすめです。ただ好みは人それぞれなので、気になった一本から気軽に始めてみてください。
エールとラガーで、飲む温度は変えたほうがいい?
目安として、ラガーはやや低め(4〜8℃)でキリッと、エールはやや高め(7〜13℃)にすると香りが開きます。冷やしすぎると香りも味も感じにくくなるので、少し温度を上げて楽しむのがおすすめです。
「クラフトビール」はエールとラガー、どちらのこと?
どちらも含みます。クラフトビールは造り手の規模やこだわりを指す言葉で、エールにもラガーにもクラフトの銘柄があります。小規模な醸造所ではエールが多い傾向ですが、こだわりのラガーを造る蔵もたくさんあります。

「これはエール?ラガー?」と迷ったら、店頭でも、オンラインストアのお問い合わせでも、気軽に声をかけてくださいね。8店舗のスタッフみんなで、あなた好みの一杯を一緒に探します。(文・廣中ようこ)


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