肌寒くなったら、“お燗”の季節。人肌燗・ぬる燗・熱燗、温度で変わる日本酒と、広島のやわらか地酒3本
朝晩、ずいぶん冷えるようになりましたね。こうなると恋しくなるのが、お燗。でも「何℃がいいの?」「うちは熱燗しか知らなくて」という声も、店頭ではよくいただくんです。実は日本酒の温度には、人肌燗・ぬる燗・熱燗と、こまやかな呼び名と表情があって——今日はそのあたりを、広島のやわらかな地酒と一緒にお話しさせてください。
この記事のポイント
- 日本酒の温度には「人肌燗・ぬる燗・熱燗」など呼び名があり、5℃ごとに表情が変わります
- 温めると香りが立ち、甘み・旨みがふくらむ。迷ったら「ぬる燗(40℃前後)」がおすすめ
- 広島の軟水仕込みのやわらかな地酒は、人肌燗〜ぬる燗でやさしい旨みが開きます
先日も、西条の店先でお客さまに「ぬる燗って、ぬるい燗のこと?」と聞かれて、二人で笑ってしまいました。字だけ見ると確かにそうなんですが、“ぬる燗”はれっきとした飲みごろの呼び名なんです。冷やして飲むのが当たり前になった今でも、ほんの少し温めるだけでお酒の表情はがらりと変わります。これを知っておくと、秋から冬の晩酌がぐっと楽しくなりますよ。
01そもそも「お燗」で、お酒はどう変わるの?
冷えたお酒は、輪郭がはっきりしてシャープ。キリッとした飲み口が魅力ですよね。ここに温度が加わると、眠っていた香りがふわりと立ちのぼり、甘みや旨みをふくよかに感じるようになります。反対に、とがった酸や苦味の“かど”はやわらいで、全体がまあるくまとまる。同じ一本でも、冷や・常温・燗で、まるで別のお酒のように表情を変えるんです。
うちは広島に8つの店舗があって、スタッフとも「この酒は燗にすると化けるね」なんてよく話すんです。とくに旨みのしっかりした純米酒は、温めることでその蔵がもともと持っていた“ふくらみ”が開いてくる。冷やでは気づかなかった一面に出会えるのが、お燗のいちばんの楽しさだと思います。
02人肌燗・ぬる燗・熱燗——温度帯と呼び名
日本酒の温度には、昔からおよそ5℃きざみで雅な呼び名がつけられています。むずかしく覚える必要はありませんが、「今日は何℃くらいにしようか」と選ぶ目安になります。ざっとこんな具合です。
| 呼び名 | 目安の温度 | 味わいの表情 |
|---|---|---|
| 日向燗(ひなたかん) | 約30℃ | 常温に近く、香りがほのかに開きはじめる |
| 人肌燗(ひとはだかん) | 約35℃ | 米の香りがふわり。やわらかく、とろりとした口当たり |
| ぬる燗(ぬるかん) | 約40℃ | 旨みと甘みがいちばんふくらむ“飲みごろ” |
| 上燗(じょうかん) | 約45℃ | 香りが華やぎ、きりっと引き締まる |
| 熱燗(あつかん) | 約50℃ | シャープでキレよく、体の芯から温まる |
| 飛び切り燗(とびきりかん) | 約55℃〜 | 香り強く、辛口のキレがいっそう際立つ |
香りをふっくら楽しみたい日は人肌燗〜ぬる燗、食事とキリッと合わせたい日は上燗〜熱燗、と覚えておくと選びやすいですよ。温度は少し下がっていく“燗冷まし”の過程でまた表情が変わるので、ゆっくり飲みながらの変化も楽しんでみてください。
03温めておいしい、広島の地酒3本
※香り・味わい・余韻は住田屋スタッフの目安です。燗の温度はお好みで調整してください。
【千福】佳撰(普通酒)紙パック 2000ml
三宅本店(広島県呉市)
熱燗 約50℃がおすすめ1856年創業、呉の「千福」。灰ヶ峰の伏流水で仕込まれた、毎日の晩酌にうれしい定番酒です。すっきりとした辛口で、熱めの燗にするとキレのなかに米のコクがふわりと顔を出します。お燗の“はじめの一本”に、私がいちばんおすすめしたいお酒です。
相性のよい一皿:おでん/肉じゃが/焼き魚
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醉心 軟水辛口純米 720ml/1800ml
醉心山根本店(広島県三原市)
ぬる燗 約40℃がおすすめ日本画の巨匠・横山大観が愛したことで知られる「醉心」。超軟水仕込みならではの、キメ細かくやわらかな口当たりが身上です。辛口でありながら角がなく、ぬる燗にするとやさしい旨みがすっと開いて、食事にそっと寄り添ってくれます。
相性のよい一皿:瀬戸内の白身魚/湯豆腐/だし巻き卵
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賀茂泉 朱泉 1800ml
賀茂泉酒造(広島県東広島市西条)
人肌燗〜ぬる燗 35〜40℃酒都・西条で、米と米麹だけの純米造りにいち早く取り組んだ賀茂泉酒造。「朱泉」は糖類・酸味料を加えない、やわらかな飲み口の旨口酒です。人肌燗〜ぬる燗にすると、ふくよかな米の旨みがじんわりと広がって、鍋ものの季節にぴったりの一杯になります。
相性のよい一皿:牡蠣の土手鍋/鶏すき/味噌仕立ての料理
商品ページを見る →※価格・在庫は各商品ページでご確認ください。
04よくある質問
- お燗は何℃がおすすめですか?
- 迷ったら「ぬる燗(40℃前後)」がおすすめです。多くの純米酒が、旨みと香りをいちばんバランスよく感じられます。熱めが好きな方は上燗(45℃)〜熱燗(50℃)、やわらかく楽しみたい方は人肌燗(35℃)を目安にしてください。
- どんな日本酒がお燗に向いていますか?
- 一般に、旨みと酸がしっかりした純米酒や本醸造は燗上がりしやすいと言われます。華やかな香りの吟醸・大吟醸は、冷やのほうが香りを楽しみやすいことが多いです。広島の軟水仕込みのやわらかな地酒は、人肌燗〜ぬる燗でやさしい旨みが開きます。
- 燗のつけ方は?電子レンジでもいいですか?
- 徳利に注ぎ、火から外した80℃ほどのお湯に1〜3分つける「湯せん」が、手軽でムラが出にくくおすすめです。電子レンジでも温められますが、上下に温度差が出やすいので、一度軽く混ぜると均一になります。
お燗は、特別な道具がなくても、お鍋のお湯ひとつで楽しめます。今夜はいつもの一本を、ほんの少し温めてみませんか。同じお酒の知らなかった表情に、きっと出会えるはずです。気になることがあれば、いつでもお気軽に声をかけてくださいね。(文・廣中ようこ)
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