オレンジとスパイスを浮かべたホットワイン(ヴァン・ショー)

肌寒い夜は、おうちで「ホットワイン」。どんなワインで作ればいい?

WINE|冬の家飲み

肌寒い夜は、おうちで「ホットワイン」。どんなワインで作ればいい?

「ホットワインって、高いワインで作らなきゃダメ?」——先日、常連のお客さまにそう聞かれて、いえいえ、むしろ逆なんです、とお話ししました。温めて香りを立たせるこの飲みものは、じつは若くて果実味のある手頃な赤がいちばん向いています。今日はその理由と、失敗しない作り方・選び方を、店頭でお話しするつもりで。

オレンジとシナモンを浮かべた温かいホットワイン
オレンジとシナモンを浮かべて、ゆっくり温める一杯(写真:Pexels/フリー素材)

この記事のポイント

  • 高価なワインより、若くて果実味のある手頃な赤が向く(渋みが強い・繊細な熟成ワインはもったいない)
  • 沸騰させず「ふつふつ手前」でやさしく温めるのが最大のコツ
  • オレンジ+シナモン+はちみつが基本。瀬戸内の広島レモンでも

西条もすっかり朝晩が冷えてきて、店先で「あったかいお酒、何かない?」と聞かれることが増えました。燗酒をおすすめすることも多いのですが、ワインがお好きな方にそっとお話しするのが、ヨーロッパの冬の定番「ホットワイン」です。小鍋でコトコト、部屋じゅうにシナモンとオレンジの香りが広がっていく——あれだけで、もう気持ちがほどけていきますよね。

01ホットワインって、どんな飲みもの?

赤ワインにオレンジやシナモン、はちみつなどを加えて温めた、甘くスパイシーな飲みものです。国ごとに呼び名があって、フランスでは「ヴァン・ショー(vin chaud=温かいワイン)」、ドイツや中欧では「グリューワイン(Glühwein=熱して輝くワイン)」、北欧では「グロッグ(glögg)」、英語圏では「マルドワイン(mulled wine)」。言葉は違っても、やっていることはどこもよく似ているんです。

歴史はずいぶん古くて、古代ローマではワインに蜂蜜と香辛料を合わせた飲みものがあり、中世ヨーロッパでは「イポクラス(Hypocras)」という香料ワインが親しまれていました。その名は、医聖ヒポクラテスに由来するとも言われています。今ではドイツやフランスの冬の風物詩・クリスマスマーケットで、湯気の立つカップを手にして暖をとる——そんな一杯として、世界じゅうで愛されています。寒い土地の人たちが、長い冬を少しでも温かくやり過ごすために育ててきた知恵なんですね。

02なぜ「高いワイン」じゃなくていいの?

ここが、今日いちばんお伝えしたいところです。ワインは温めると、冷たいときには奥に隠れていた渋み(タンニン)やアルコールの刺激が、ぐっと前に出てきます。そこへ砂糖やスパイスの風味も重なるので、もともと渋みの強い若いワインや、長い熟成でようやくそっと開いてきた繊細なワインは、持ち味が喧嘩したり、せっかくの香りが飛んでしまったり。だからホットワインには、渋みがやわらかく、果実味のはっきりした手頃な赤が、いちばん向くんです。いいワインを火にかけるのは、正直なところもったいない——私はいつもそうお話ししています。

向いているワイン

果実味ゆたかで、渋みはひかえめ。ガメイ、マスカット・ベーリーA、メルロー、グルナッシュ、コンコードなど。1,000〜2,000円台のもので十分です。

温めると

あまり向かないワイン

渋みの強い若い赤(濃いめのカベルネなど)、樽をしっかり効かせた高級ワイン、長期熟成の古酒。繊細さや渋みが、温めると裏目に出がちです。

覚えておきたいことホットワインは、背伸びしないほうがおいしい。果実味ゆたかな普段の赤が、いちばんの主役です。

03失敗しない作り方

難しいことは、何もありません。小鍋に赤ワインを1本ぶん注いで、スライスしたオレンジ、シナモンスティック、クローブ(丁子)、お好みでスターアニス、それにはちみつか砂糖を大さじ2〜3杯。あとは弱火で、ふつふつと泡が立つ手前まで、やさしく温めるだけです。温度の目安は、こんなイメージでどうぞ。

約60℃飲みごろカップで温かい 約80℃ふつふつ手前温めるのはここまで 100℃沸騰は✕香りとアルコールが飛ぶ
1

鍋に入れる

赤ワイン1本、オレンジ、シナモン、クローブ、はちみつ大さじ2〜3。

2

弱火でそっと

ふつふつと泡立つ手前まで、やさしく温める。沸騰はさせない。

3

こして注ぐ

5〜10分で香りが移ったら、茶こしでこしてカップへ。

最大のコツは「沸騰させない」こと。ぐらぐら煮立ててしまうと、アルコールの角とともに、せっかくの香りまで飛んでいってしまいます。お酒を控えたい方やお子さまには、少し長めに火を入れてアルコールを飛ばすか、ぶどうジュースで同じように作っても、ぽかぽか温まるおいしい一杯になりますよ。

オレンジの代わりに、瀬戸内の広島レモンを一切れ浮かべても、きりっと爽やかな香りに仕上がります。りんごやしょうがを少し加えるのもおすすめ。そのあたりは、ぜひご家庭の味を見つけてみてください。

小鍋でゆっくり温めるホットワイン
ふつふつ手前で、やさしく。香りが立ったら火を止めて(写真:Pexels/フリー素材)

04おうちホットワインにおすすめの3本

※香り・味わいは住田屋スタッフの目安です。

三次ワイン 緋(あけ)
赤・ライトミディアム|広島・三次

三次ワイン 緋(あけ)

広島三次ワイナリー

地元・広島県三次の澄んだ水と気候が育てた、普段使いのデイリー赤です。もともと芳醇な香りとスパイスのニュアンスをもっているので、オレンジやシナモンとも相性ぴったり。地元の一本で作るホットワイン、私はこれがいちばん好きなんです。

香り熟した赤い果実と、ほのかなスパイス
味わいライトミディアム。程よい渋みで飲み疲れしない
ホットに香りが素直に開く。普段飲みにも、温めても◎

合わせたい一皿:ローストチキン/ソーセージ/カマンベール

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蒼龍 無添加 赤わいん 中口
赤・中口|山梨・勝沼

蒼龍 無添加 赤わいん 中口

蒼龍葡萄酒(1899年創業)

ホットワイン初挑戦なら、まずこの一本を。コンコード種ならではのぶどうジュースのような果実味で、渋みはごく控えめ。はちみつやオレンジとすっと馴染んで、いちばん失敗しにくいんです。酸化防止剤・保存料を使わない無添加づくりも、うれしいところ。

香りコンコードの甘い果実、ぶどうジュースのよう
味わい濃厚でフルーティ、酸味・渋みは少なめの中口
ホットに甘み・スパイスと好相性。いちばん作りやすい

合わせたい一皿:りんごのタルト/ナッツ/シナモントースト

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カルチェロ ティント
赤・ミディアムフル|スペイン・フミーリャ

カルチェロ ティント

Carchelo Tinto/ボデガス・カルチェロ

「もう少しコク深く作りたい」という日に。地中海の陽を浴びたスペイン南部・フミーリャの赤で、モナストレルを主体にした力強くフルーティな味わい。もともとスパイシーな風味があるので、クローブやスターアニスとよく合います。オーガニック栽培の一本です。

香り熟した黒い果実に、ほのかなスパイス
味わいミディアムフル。果実味ゆたかで厚みがある
ホットにスパイスに負けないコク。本格派の一杯に

合わせたい一皿:ビーフシチュー/チョリソー/ハードチーズ

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※価格・在庫は各商品ページでご確認ください。

05よくある質問

ホットワインは、どんなワインで作ればいいですか?
渋みがやわらかく、果実味のはっきりした手頃な赤ワインがおすすめです。ガメイやマスカット・ベーリーA、コンコードなどが作りやすく、1,000〜2,000円台のもので十分おいしく仕上がります。高価なワインや長期熟成の古酒は、温めると持ち味が崩れやすいので避けたほうが無難です。
温めるとき、沸騰させてもいいですか?
沸騰はさせないでください。ふつふつと泡立つ手前(80℃くらいまで)で、やさしく温めるのがコツです。ぐらぐら煮立てると、アルコールの刺激が立ち、せっかくの香りも飛んでしまいます。
白ワインでも作れますか?
作れます。中欧には「白のグリューワイン」もあり、柑橘やりんご、しょうがと合わせると軽やかな味わいになります。辛口よりも、果実味ややわらかな甘みのある白ワインが向いています。

寒い季節のホットワインは、特別な材料も、特別なワインもいりません。冷蔵庫に少し残った赤があれば、それで十分。鍋から立ちのぼる香りごと、どうぞ楽しんでくださいね。気になるワインがあれば、いつでも店頭やオンラインでお声がけください。(文・廣中ようこ)


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